よってたかって恋ですか?


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念願の見渡す限りというコスモスの群生を 思う存分堪能し、
秋の空とさわやかな風の下、ブッダ謹製 海苔巻き弁当を堪能し。
他も観て行こうかと回った園内で催されていた、
秋の実りを味わうワゴンとやらで、
石焼き芋の無料サービスにも幸いな出会いをし。
園内で栽培したという 蜜入りサツマイモのみならず、
ほくほくのカボチャや大粒の栗も蒸されていたのや、
園内の間伐材をチップにして
じっくり燻したという燻製ソーセージなど、
しっかと堪能させていただいて。

 スズカケや トチノキも紅葉していて綺麗だったねvv
 もちょっとしたら今度はイチョウが色づくね♪、と

少しずつ早まりつつある黄昏の色が 風の中へと滲む中、
それはご満悦のまま、植物園からの帰途についた最聖のお二人で。

 「ありゃま。」
 「? どうしたの? イエス。」

それから週末を越した、翌週半ばの22日は
皆既月食を観測したのとはまた別、
今度はオリオン座流星群がたくさん観測出来る“極大”の晩だとあって、
有志で集まっての“星観の会”が予定されていたのだけれど。
当日の関東の夜空には、残念ながらうっすら雲がかかってしまい、
今宵は中止としましょうというメールが、
夕刻より やや早いめに各々の手元へと届けられて。
主催した専門家のお人が、
気象庁系の衛星画像などなどを照合して下した判断だとか。
集まったが観えないでは、人によってガッカリの度合いも違おうし、
判っておれば夜半までの時間を別の予定へ振り分けられもしたのにと、
そうと思うと ただ残念だとだけでは済まないお人もいようから。
そうまでマニアな集いでもなかったことだしと、
融通の利いた結論を出されたらしい。
何せ集まる予定だったのは皆大人ばかりだったので、

 【 ただ、今週中は月齢などの条件がさほど変わらないから、
   週末までの明日や明後日の晩が晴れたなら 狙い目ですよ?】

なので、双眼鏡はそのままお貸ししときますと、
星に詳しく、今回もお誘いくださったあのおじさまが、
イエスのスマホへそんな追加連絡をメールでくださって。

 「そっか、各自の判断でってことだね。」

本来ならば、
同好の士でお顔を揃えて集まって、
語らい合いつつ興じる…というのが 楽しいのではあるが、
お天気という 一番重要な基礎的条件が微妙では仕方がない。
頑張って観てやるぞと粘るのも平気だ、
ダメでもそういうものサと割り切れる人もいりゃあ、
重きを置く配分が違っていて、
結局 時間を潰えにしただけかよと
腹立たしくなる人もいるかも
…という考慮あっての この通達を受けて、

 「じゃあvv」
 「うん、晴れるのを待とう♪」

こちらのお二人が選んだのは当然そちら。

 何だったら天界からのレーダー情報を送ってもらおっか?
 いやそれは、越権行為というか ズルくないかな、と

ちょっと特別、
文字通り“上階層世界”に コネがなくはない彼らならではな
“天界ジョーク(?)”も交えつつ。
遠足や花火大会でも待つように空模様を窺いながら、
翌日1日とそのまた翌日を半分ほどやり過ごすうち、
イエスがまずは落ち着きがなくなってしまい、

 「今夜は晴れそうだよね。ね? ブッダ♪」

観るのは流れ星だから、薄曇りでも見つけにくいの判ってる。
だから先日は中止になったの、重々 判っているけれど。
でもね、あのねと、
いかにも澄んだ秋空なのと お隣りのブッダの顔とを交互に見やり、
これなら・でしょう?と、お返事をまてば、

 「うん、大丈夫だ。」

雲も少ないし、
天気予報でも日没後は月のマークしか並んでないしと、
ブッダがOKだねとの太鼓判を押してくれたので。

 よし、今夜こそ決行だと
 二人の間での“星観会”開催が決定されて

 「わあ、幾つ観られるかなぁvv」

週末の金曜だから、
融通の利く人が出て来るかも知れないしと
イエスが楽しそうに言い足したものの、

 「水を差したくはないけど、でもね。」

同じように卓袱台についていたそのまま、
まだ湯気の立つ煎茶の入った湯飲みをまろやかな手の中に包み込み、
ちょっぴり眉を下げてブッダが進言したのが、

 週末だからこそ、
 呑もうよ逢おうよという約束
 先にしていた人も多かろう、というご意見で

 「そっかぁ。会社とかにお勤めの人はそうなるよね。」

そういう方面への考慮がするりと出来るなんて、
やっぱりブッダって大人だなぁと。
2000年紀以上過ごした身と区切れば、
間違いなく同じ年代層な筈のイエスが
凄い凄いとばかり素直に感心してくれるのが、

 「…ありがとね。/////////」

面映ゆいやら くすぐったいやら、
何とも微妙な心持ちだった如来様だったのはさておいて。(笑)

 「でもね、月食のときみたいに、
  帰りに銭湯ってワケにはいかないよ?」

 「あ、そっか。」

あの時は、晩の7時8時という早い時間帯だったから
観測したあと、そうやって温まって帰れたが。
今宵の流星群は、恐らく日付が変わるころがピーク。

 「先に入るっていうのも湯冷めしそうだよね。」
 「うん。」

今日はお風呂もお休みだねと、
午後からは そんなこんなという段取りを
あーだこーだと構えつつ、片っ端から消化してゆき。

 そうそう、デジカメも充電しとかないと。
 ブランケットと、ステンレスの水筒で温かいお茶も持ってこうねvv
 つか、やっぱりオニ公園?
 あそこが一番 頭の上が広く空いてるし。

流星群の場合、空のどこらへんと指定出来ないのがデフォなので、
一角しか見えないというのでは条件が良ろしくない。
そこでと どこか見晴らしのいい場所へ
お出掛けする気満々でいるお二人なのであり。
出掛けるのならいっそ、広いところを目指したいらしいブッダなのへ、

 “なんか、私以上に楽しみにしてない?”

生真面目なればこそ、
やるなら徹底的にと構えているものかと思っていたが。
計画を一生懸命に消化しているという真っ直ぐな姿勢より、
お出掛けが楽しみだとするウキウキした気色が
語らぬうちからイエスへもありありと伝わってくる。

 だって 忙しい忙しいと手際よく動き回りつつ、
 その端々に笑顔が絶えないのだもの、と

わざわざ指摘まではせず、横目でチラ見をしては、
可愛いなぁと、溜飲を下げて過ごした午後でもあったそうな。




  (後篇へ)




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